前回の記事でフリー側をラジアル、反フリー側を8本組にすれば、左右差は是正されるけど現実的ではないと軽く紹介しましたが、この記事で詳しく解説していきます。
首折れ式スポークではフリー側ラジアル組み出来ない理由
手組ホイールは一般的に首折れ式のスポークを使います。

ライダーがペダルを回すことで入力されたエネルギーは、チェーンからスプロケ、そしてハブを介し、後ろ向きのスポークを引っ張ります。

首折れ式スポークの動力伝達効率を考えればcosθ(スポークとハブの中心からのラジアル線との角度)が90度になると最も効率は良くなります。

もしもラジアル組をすると、ハブが受けるねじりトルクをうまく受け止められません。

手組でフリー側をラジアル組みすると起きる不具合は、それだけではありません。
全てのスポークを外側→内側に通したスポーク(インベンド)で組む場合、ハブフランジの厚み+スポークの首折れ分の寸法を合わせると実効的なスポークの位置がハブのセンター寄りになってしまいます。

つまり、おちょこ量が大きくなってしまう訳ですね。
ただでさえ多段化の影響により、おちょこが厳しくなっているのに、これではダメですね。
逆に全てのスポークを内側→外側に通したスポーク(アウトベンド)で組む場合、スポークがフランジより大きく右側に張りだすので、スプロケットやチェーンに干渉する可能性があります。

普通のタンジェント組で組んだ場合ではアウトベンドとその逆のインベンドが一対となっていて、交点を編みます。
交点を編むことで、アウトベンドスポークも内側に抑えられ、スプロケットやチェーンへの干渉を防いでくれます。
ではどうすればフリー側ラジアル組みできるのか
ストレートネックのスポークであれば、ハブが受けるねじりトルクもある程度受け止めることができます。
チェーンやスプロケへの干渉もありません。

そこで、ハブを専用設計にしてストレートスポークにし、フリー側ラジアル、反フリー側6本組相当にしよう!という趣旨で考案されたのがMAVICのイソパルスです。

このように、フリー側をラジアル、反フリー側をできるだけCOSΘ=90度に近づけた設計をしています。
左右差も是正され、動力伝達効率も考えられています。
イソパルスはよく考えられたホイールなんですね。
手組ホイールで、できるだけイソパルスに近い組み方をしたのが、フリー側4本組、反フリー側6本組(または8本組)なんですね。

反フリー側の組本数はできるだけ多くしたいところですが、スポークの総数によって可能な組本数は変わります。詳しくはこちら。
まとめ
いかがでしたか?
ロードバイクのホイールは本当に奥が深いんです。
まだまだ解説が続きます。
次回はスポーク総数と組み本数について解説します。おたのしみに
>ストレートネックのスポークであれば、ハブが受けるねじりトルクもある程度受け止めることができます。
スポークは細くて長いから、ハブ側を剛固定するのもピン固定するの全く変わらないと思う
思考実験ですが、天井から吊るしたスポークに100kg(スポークテンションと大体同じ)のおもりをぶら下げていて、そのおもりを揺らすことを考えます。
天井との接合部が左右に自由に動く場合と、天井に固定されている場合を比べた時におもりを大きく揺らせるのは前者ですよね?
同じことです。
ちなみにピン固定とは何でしょうか?Jフックスポークは引っ張るのみで固定されません。