もくじ
フルクラム・カンパニョーロホイールは何がいいのか?
ホイールの話、前回の続きです。
今回はフルクラムとカンパニョーロのG3組について解説していきます。
フルクラムとカンパニョーロのホイールは見た目が美しいだけでなく、大変に考え抜かれた素晴らしい構造を持っています。
前の記事で、後輪はおちょこがある為に、左右でスポークテンションに差ができるという話をしましたが、その左右差に強烈な是正をかけるのが、DS(ドライブサイド)とNDS(ノンドライブサイド)でスポークの数を2:1とする組み方です。
更に、メガフランジと呼ばれるように、DSのフランジ径をできるだけ大きく、NDSのフランジ径を出来るだけ小さくすることでも、左右差の是正に貢献しています。
~少し脱線~
フルクラムのレーシング5とレーシング7は、数年前までは2:1を採用していたのですが、ここ最近のモデルは1:1になっています。(レーシング7はレーシング6へとマイナーチェンジしました)
なぜ1:1にしたのかと言うと、スポーク総数を24本から20本へと減らせたので、スポーク4本分軽くできるからです。
「値段はあまり変わらずに軽くなって素晴らしい!」というユーザーの評価もありますが、剛性面でみると改悪としか言えません。
しかし、低価格帯のホイールを買い求めるくらいのユーザーは、剛性よりも軽さのほうが優先すべき事柄であることは、マーケティング的に正しいとは思います。
~脱線おわり~
2:1組にも種類がある
現行モデルのクアトロと旧モデルのフルクラムの全てはこのような
組み方をしています。
これを仮にЖ(ジェー)組みと呼びます。
現行のレーシング3以上のホイールはこのような
組み方をしています。
これを仮にXI組みと呼びます。
(カンパニョーロのG3組はXI組みです)
なぜクアトロと旧モデルはЖ組みをしていたのでしょうか?
Ж組みのリムを見てみると、等間隔にニップル穴が開いているのが分かります。
このリムでXI組みをする場合とЖ組をする場合を比べてみましょう。
DSのスポークを赤、NDSのスポークを青にしました。
このようになります。
前の記事でCOSΘが90度の時に動力伝達効率が最も高くなるという話をしましたね。
DSのスポークに注目してみると、XI組の場合は隣同士の穴に入っていて、Ж組みの場合は一つ飛ばしの穴に入っているのが分かります。
つまり、Ж組みの方がCOSΘは90度に近くなるという事です。
なぜ最近のフルクラムはXI組みになったのか?
ではなぜ最近のレーシング3以上のホイールはXI組みになったのでしょうか?
良くスポークパターンを見てみましょう。
スポーク総数は21本ですが、28hリムのNDSを7本間引いた恰好になっていることがわかります。
この場合、存在しない穴を一つ飛ばしにしているので、XI組みでもЖ組みでもCOSΘは変わりません。
つまりは、新設計であるというアピールやクアトロとの差別化によってXI組みがなされている事になります。
平たく言えば”かっこいいから”です。
フルクラムの進化論
で、実は古い設計のЖ組みよりも新しい設計のXI組みの方がCOSΘの角度は鈍角になっています。
カンパのG3組みと比較してもやはり新XI組みの方が鈍角です。
それなのに新旧フルクラムを比較すると新型の方が固いですし、レーシングゼロとシャマル、レーシング3とゾンダのようにフルクラムとカンパを比べても、フルクラムの方が固いです。
なぜでしょうか?
新旧比較で、新型の方が固いのはDSのフランジが大きくなったのが大きな要因です。
フルクラムVSカンパでフルクラムのほうが固いのはニップルがリムの支える範囲がG3と比べて広いので、横剛性が高い為です。
COSΘが90度に近い方が駆動剛性が高いことは間違いないと思いますが、その優先順位は低く、フランジ径の大きさやリムの支える範囲といった要素の方が、剛性確保には大事な要素であるようです。
反フリーラジアル組みなのはダメじゃないの?
前の記事で、反フリー側をラジアル組みするのは最悪だ、というような話をしましたが、フルクラムもカンパG3も反フリーラジアル組みです。しかし、2:1組みのホイールでは許容できるんです。
なぜでしょうか?
一つは、DSの半分の数のスポークでタンジェント組みをすると、逆にDSよりもNDSのスポークテンションが高くなってしまう可能性がある為です。
2:1組みで、左右のスポークテンションが同じと仮定した場合、リムのニップルホールにニップルが食い込む力はDSよりもNDSに倍の力がかかります。
NDSのスポークテンションの方が高くなってしまうと、ニップルがリムを突き破って出てきてしまう可能性があるという事です。
もう一つは、極端なハイローフランジによって、NDSはラジアルでもタンジェントでも大きな差が出にくい為です。
思考実験ですが、タンジェント組みをしているフランジの径を段々小さくしていけば、フランジ径が点になった時にラジアル組みと同じことになりますね。
極端なハイローフランジであれば、NDSをわざわざタンジェント組みするメリットが薄いという事になります。
まとめ
というわけでフルクラムの2:1組とカンパのG3について解説しました。
ホイールの話はまだまだ続きます。お楽しみに!